My important place【D.Gray-man】
第35章 抱擁
「…疲れた…」
「お疲れ様」
教団の談話室の机に突っ伏して、溜息一つ。
絞り出した声を聞き取ってくれた目の前のその人物が、労いの言葉をかけてくれる。
内勤でよかった。
こんな不安定な気持ちで外で任務中にAKUMAとでも遭遇したら、下手したら命を落としてしまう。
だけど寝不足も祟って、仕事を終えて入れず終いだったお風呂も終えた時には、すっかり体は疲労していた。
「でも折角女性らしい服や小物を買ったのに、その次の日には酷い顔になってるってどういうこと?」
「…スミマセン」
恐る恐る顔を上げれば、にっこりと笑うその目と合う。
これは不可抗力です、リナリーさん。
「夜更かしは女性の敵なんだから。ちゃんと寝なきゃ駄目よ?」
「気を付けます」
めっと言うように人差し指を立てて忠告してくるリナリーに、思わず苦笑い。
ごめんね、リナリー。
「それで、何? 渡したいものって」
「ああ、うん。はいこれ」
「?」
お風呂上がりにリナリーに声をかけられて、談話室で話そうと腰を落ち着かせた。
向かいのふかふかのソファに座って、リナリーが笑顔で差し出してきたのは、一冊のミニアルバム。
……まさか。
「…本当に作ったの」
「言ったでしょ、ちゃんと」
恐る恐る開けば、最初のページには昨日リナリーに着飾られた私の写真が収められていた。
「偶にはこれ見て、女性意識高めてよね」
「…了解です」
ペラペラと捲れば、ラビやクロウリーと一緒にいた時の写真も勿論、差し込まれていた。
その他にもいつの間に撮ったのか、スイーツにかぶり付くアレンや香水を熱心に選ぶリンクさんの写真なんかもある。
…まぁ、こういう写真なら悪くないかな。
なんか思い出みたいで。
「ありがとう、リナリー」
そうやって昨日の楽しかった出来事を振り返っていれば、自然と気持ちは浮上した。
挽回した訳じゃないけど、少しは元気を分けてもらえた気がする。
うん、そこはリナリーに感謝しなくちゃ。