My important place【D.Gray-man】
第35章 抱擁
教えてほしい。
この現象がなんなのか。
あの双子でもいい、ノアのことを知っている人に会いたいとさえ思った。
無知なまま、時を過ごすのは不安でしかなかったから。
「雪? おーい」
「!」
ぱちんっと目の前で指先を鳴らされて、はっと意識が向く。
見上げれば、指を鳴らした本人が肩を下げて溜息をついた。
「やっぱ寝不足が祟ってんさな。今日は早く寝ろよ」
「…ん。そうする」
小さく頷いて、ラビ達に軽く手を挙げる。
「じゃあね。仕事行かないと」
「はい。途中休憩取れたら、仮眠でもして下さいね」
「ありがとう、アレン」
「そのまま寝過ごさないように」
「…気を付けます、リンクさん」
アレンには笑って、リンクさんには苦笑混じりに。
それぞれ別れを告げて、他の団員達に混じって廊下を歩く。
額の十字傷は消えたのに。
もうコソコソ隠す必要はないのに。
謎の白い影も消えたのに。
もう鏡を見て怯えることもないのに。
逆にその痕跡が消えたことが、薄ら寒く感じた。