My important place【D.Gray-man】
第34章 Resonance
──ィイイン…
「──…」
ゆっくりと、意識が浮上する。
なんだか耳鳴りのような音が微かに聞こえた。
気がした。
「……あ、れ」
見えたのは、見慣れた自室の天井。
枕元の照明だけ付けた、薄暗い部屋の中。
…私、寝ちゃってたのかな…。
額に手を当ててベッドから起き上がる。
ああ、お風呂入らなきゃって思ってたのに。
そういえば化粧も落としてない。
「…うわ。完全に寝落ちちゃってた…」
寝入る瞬間の意識はなかった。
どうやら完全に無意識で寝入っちゃってたらしい。
思わず溜息をつきながらベッドから下りる。
せめて化粧は落としてから寝るべきだったなぁ…。
顔、酷いことなってないかな。
皺になってしまったスカートの裾を引っ張りながら、姿見に歩み寄る。
化粧がボロボロの酷い顔になってたらどうしよ。
「というか今何時…」
欠伸混じりに鏡の中の自分を見る。
「──」
そこで動きは止まった。
「…………え?」
人間、心底驚いた時って。
大きな反応はできないのかもしれない。
鏡に映って見えたのは、唖然と立つ自分の姿。
それは見慣れた自分の顔なのに。
浅黒い褐色肌。
透き通るような金色の目。
薄暗い照明の中でも確認できたそれは、明らかに見慣れない自分の姿だった。
まるで、あの双子のように。
「…ぁ…」
急に思い出した。
今さっきまで見ていた夢。
夢のようで、まるで夢じゃなかった。
二人の男の子の少し悲しい出来事。
──ィイイン…
耳鳴りがする。
どこか頭の奥底で。
『よーく見てろよ。あんたがラースラなら、"これ"はあんた自身の姿だ』
不意に思い浮かんだのは、デビットの言葉だった。
ふらつく体をどうにか抑えて、鏡の中の自分を凝視する。
薄暗い照明の光に照らされた、浅黒い肌。
日本人じゃ到底持てないはずの、金色の色素の薄い瞳。
「…っ」
体に不調なんて感じなかったのに。
なんで、急に。