My important place【D.Gray-man】
第34章 Resonance
咄嗟に額の絆創膏を引き剥がす。
少し血の滲んだ十字模様の傷跡。
それが額にあるはずだった。
「な…っ」
そこにあったのは、紛れもなくしっかりと刻まれた十字模様の跡。
ただいつもと違ったのは、傷跡なんかじゃなかった。
はっきりと浮かんだ黒い十字模様の聖痕。
「…んで…」
なんで。
寝ている間に覚醒した?
そんなことあり得るの?
痛みも違和感も何もなかった。
ただ一つ、あの双子の夢を見ただけなのに。
「…ッ」
こじ開けるって、こういうこと?
もしも中途半端にノアメモリーを流し止められてなかったら。
あの街中でこんな姿になっていたってこと?
わからない。
わからないけど、確かなことは一つだけ。
「…ほんと…だったんだ…」
"もしかしたら"
そんな浅はかな希望を、捨て切れずにいた自分。
ノアになることを受け入れても、もしかしたら覚醒なんかしないのかもしれない。
全ては私の勘違いで、ノア化なんてしないのかもしれない。
そんな浅はかな小さな希望を捨てきれなかった自分。
それは本当にただの浅はかな願望だった。
「……痛い」
頬を強く抓る。
ヒリヒリと痛むそれは、確かな痛み。
「……」
…い、いやもしかしたら感覚の錯覚かも。
「っ、い、痛い」
ぎゅーっと、今度は渾身の力で抓ってみる。
でもやっぱり痛い。
若干涙が出そうなくらい。
咄嗟に手を離して狼狽えながらよろければ。
ガンッ
上げた足の小指と姿見の角がこんにちは。
「ッッ~!!」
い、いい痛いぃい…!
思わず足首押さえて無言の悶え。
痛い。これは痛い。
これは絶対夢じゃない痛い!
「っは…本当、痛…」
足首を押さえて蹲ったまま、思わず口から零れたのは自嘲的な乾いた笑いだった。
…これは現実なんだ。
夢じゃない。