My important place【D.Gray-man】
第7章 黒の教団壊滅事件Ⅰ
「神田なら、あっちで見ましたよ」
「本当かい?」
「はい」
嘘っぱちで食堂の外を指差せば、顔を上げたティエドール元帥の腕が緩む。
その一瞬の隙を神田は見逃さなかった。
「この…ッ髪型で判断してんじゃねぇよ!」
ズバン!と。小さな体を器用に捻って、繰り出された回し蹴りが勢いよくティエドール元帥の顔面に入る。
うわ、あれは痛い。
そのお陰でティエドール元帥の腕から解放された神田が、素早く傍に寄ってくる。
振り返れば、私の服を掴むラビも其処にいた。
二人共、普段は見上げる程背が高いのに、今では頭部が見下ろせる程に小さな子供の姿。
「でもどーするんさ、この状況…!」
「くそ、逃げ場がねぇ…!」
亡者の群に囲まれた状況。
エクソシストとして腕ある二人だけど、今はイノセンスも所持していないらしい。
となると大きな戦力にはなれないかもしれない。
そうなれば頼れるのは自分だけだ。
「ちょっと荒いけど、正当防衛ってことで」
「へ?」
「なんっ…」
二人の言葉を待たずに、食堂に入る前に覗いていた厨房から拝借していたそれを数本ポケットから放る。
アルコール度数の高いウイスキーの瓶の口に布を詰めたそれは、同じく厨房で見つけたライターによって今し方点けた火が灯っていた。
結果。
「げっ…!」
「お前…!」
「逃げるよ!」
ガチャン!と瓶が割れる音がして、辺りが一気に炎に包まれる。
ごめんなさい、正当防衛ってことで許して下さい。
驚く二人の腕を掴んで、火の上を飛び越えるようにして駆け出す。
生きる者の本能としてか、亡者と化した団員達は炎に近付こうとはしなかった。
それでも作戦として見れば生存率なんてほぼほぼ低い。
緊急処置として考えた案だったけど。
「はぁ…ッ…は…っ! ちゃんと後で説明してよ…ッ!」
「いいから、とにかく逃げろ!」
ごめんアレン、ジョニー。
助けられなかった二人に心で謝って、神田の声に鞭打たれるように、とにかくひたすら走った。
一応、病人なんだけど私…!