My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
「──…はぁ」
「えらく深い溜息であるな、雪」
つい深々と溜息をつく。
隣で苦笑するクロウリーに目線を上げて、それから前方を見やる。
「だって…あれ」
「?」
つられてクロウリーの目も、前方へと向く。
街へ降りると、リナリーが行きたいと言っていたお店に皆で真っ先に向かった。
そんな此処は、街中でも特に大きなインテリアファッションのお店。
煌びやかに様々な女性物の洋服や雑貨が並ぶ中、楽しそうに物色しているのは、
「これなんてどうかしら」
リナリー。
「僕はこっちも可愛いと思います」
アレン。
「そーさ? オレはこっちかなー」
ラビ。
「それに合う香水ならばこれでしょう」
リンクさん。
皆思い思いに勧める洋服や小物や香水を手に、色々と物色している。
それだけならいい。
楽しそうな光景だと思う。
リナリーを中心に、女性物のコーディネートをするのは。
だけど。
「ねぇ、雪もこっち来て一緒に見ましょうよ」
「…私はちょっと休憩」
「あら。雪の私物を選んでるのに、本人が見なくてどうするの」
「……」
そう、その選んでいるブツは全てどうやら私の私物と化すらしい。
てっきりリナリーが着たい服を買いに来たかと思ったのに。
どうやらいつの間にかリナリーの目的は、私を着飾ることに変わっていたらしい。
いつ変わったんだろう。
そんな話、今までしたことないのに。
というか兎さんすっかり楽しんでますけど。
リナリーにあの画像写真の削除頼むんじゃなかったの。