My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
はー、と溜息をこっそりつきつつ、もう一度その姿を見る。
「ご馳走様でした」
「ご馳走様。…って相変わらず食べるの早いねアレン」
「それ程でも」
大量の料理を腹に収めたアレンをまじまじと見ながら、感心するように呟く。
そんな雪の姿は、いつもとはまるで違っていた。
なんていうか…女子。
何処をどう見たって女子。
隙がないくらいに女子。
や、普段の雪が女らしくないって訳じゃねぇんだけど…や、そうかも。
男みたいな言動をしてる訳じゃねぇけど、そういう女の武器みたいなもんは見せたりしない。
そんな雪だから、こうして女らしさが溢れ出てる格好は見慣れなくて顔が熱くなった。
…また顔赤くなってねぇかな。
変にバレないようにしねぇと…って、あ。
なんかリナリーと目が合った。
あ、なんか意味深ににっこり笑われた。
「……」
…やべ、バレたかな。
「雪さん、この後って暇ですか?」
「え? うん。暇だけど…」
思わず顔を片手で擦っていると、空になった皿を台車に乗せながら問いかけるアレンの言葉を耳にした。
ちょっと待つさ、まさか──
「じゃあ僕と街にでも出掛けませんか? 折角そんな綺麗な格好してるんですし、僕まだ見ていたいです」
「お出掛け?」
…やっぱな。
きょとんとする雪に爽やかな笑顔で誘うアレンは、下心なんてまるで見えない。
まぁ現に変な下心なんてないんだろうけど。
ここまで爽やかに言い切れる男なんて、そういないと思う。
そこばっかりは感心するさ。