My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
朝。
今頃、司令室で任務説明でも受けてるのかなぁなんて神田のことを思いながら、共同洗面所で歯を磨く。
目の前の横長の鏡に映った自分の姿を見て、歯を磨きながら。
「…はぁ」
溜息一つ。
ガラガラとうがいをして水と共に歯磨き粉を吐き出して。
「……」
もう一度、鏡を見る。
其処には私の後ろに、ぴったりと寄り添うように映っている白い影が一つ。
「…もう見慣れたな、これ」
ずっと付かず離れず…いや、ぴったりくっ付いて。
その影は私の傍にいた。
はっきりと見えるようになったのは、ラビ達との中国任務を終えてから。
そしてどうやら見えてるのは私だけらしい。
…というか他の人に見られたら困る。
だって多分、これは──
"ノア"に関する現象だろうから。
どういう意味での現象なのか。
タイムリミットが近付いているのか。
わからないけど、どうやら私に直接害を及ぼすものではないみたいだから見て見ぬフリをすることにした。
…というか見て見ぬフリしないとキツい。
なにこのにんまり笑った、口元だけ見える白い影。
見た目的にキツい。
夜中に鏡見た時はビビったよ流石に。
…全く、
「鏡見たくなくなるなぁ…」
「ほんとですね…」
だよねー…
…………………だよね?
「へ?」
思い掛けない同意に、思わずうんうんと頷いていた顔の動きを止める。
そのまま横に目を向ければ。
「ふぁあ~あ…ティム、歯ブラシー…」
眠たそうな目元を擦りながら、ティムに歯ブラシをせがむアレンが其処に──…ちょっと待って。
「…アレン?」
「ふぁい?」
思わず呼びかければ、これまた眠そうな目がこっちに向く。
私のことをはっきりと認識してないらしい。
「…此処、女性用洗面所だけど」
「ふぇ?」
男性用洗面所はお隣ですよ。