My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
「折角綺麗になったんだし。神田本人に見せなきゃ意味がないでしょ?」
「意味なくなんてない! 綺麗にしてくれてありがとう! それだけで充分です!」
リナリーの手首を強く掴んで止めても、美少女は顔色一つ変えずさらりと当たり前に言い切った。
いやいやいや。
神田が任務でいない今だから、潔く着せ替え人形になったけど。
こんな姿神田に見られたら、"何女の恰好してんだよ"って呆れられるに決まってる!
時々私の性別無視してたしね、あの人!
「何言ってるの。女の子が可愛くあるのは、好きな人にそう見られたいからでしょ」
「ぃゃ…それは…っ」
否定はしないけど…ッ
「じ、じゃあリナリーもそうなのっ?」
「え?」
それは咄嗟に話題を逸らす為に振った言葉だった。
「リナリーはいつも可愛くしてるでしょ? それって、そうやって見てもらいたい人がいるから?」
だったけど。
「……」
あれ。
急に押し黙ったリナリーに違和感を覚えれば、その顔が──…あ。
赤くなった。
「あらまぁ…もしかしてリナリーちゃん…」
「……そういう人がいるんだ」
思わずまじまじとジェリーさんとその顔を見る。
すると恥ずかしそうにリナリーはそっぽを向いてしまった。
わー…何この可愛い生き物。
私と同じ女ですかそうですか凄く可愛いんですけど。
「別に好きとかそういう訳じゃ…ちょっと、気になるかなってだけで…」
「え、誰それ。同じ教団の人?」
「アタシも気になるわね~。コムタンが知ったら驚くわよ」
「に、兄さんには言わないでっ」
慌ててジェリーさんに口止めするリナリーの気持ちは、よくわかった。
コムイ室長がそんなこと知ったら、その相手を半殺しに行きそうな気がする。
「勿論言わないわよ! 女同士の秘密ねっ」
いや、女同士違いますジェリーさん。
女性とオカマさんです、ジェリーさん。