My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
「だからその相手、教えてくれる? リナリーちゃん」
「あ。私も知りたい」
「えっ」
「神田のこと教えたでしょ。リナリーも教えてよ」
そう問い詰めれば、流石のリナリーにも反論の余地はなかったのか。暫く迷う素振りを見せた後、ほんのりと頬を紅色に染めたまま、恥ずかしそうにその薄いピンク色の唇を開いた。
「………アレン君」
…まじでか。
こんな美少女を惚れさせるなんて流石アレン。
流石英国紳士。
ってか付き合ってなかったんだね二人共。
友達以上恋人未満だったんだね。
「でも好きっていうより、大事な仲間っていう意識の方が高いから…っ」
「うんうん、そっかそっか」
慌てて弁解するように付け足す必死なリナリーが、なんだか可愛くて思わずその頭を撫でたくなった。
薄く色付いた頬に、いつもの凛とした姿は見当たらない気恥ずかしそうな姿。
その姿は誰が見たって目を惹く可愛さだと思う。
…あ、これなのかな。
ふとリナリーが今朝、私に言っていた言葉を思い出す。
『ほら、言うじゃない。恋する女性は綺麗になるって』
恋するリナリーの姿は、いつもの姿と違って見える。
それは確かに、今朝のその言葉通りのものだった。
……私もそんなふうに見えたのかな?
リナリーの目には。
「誰にも言っちゃ駄目だからね? 絶対よ」
「うんうん、わかったわかった。約束するから、神田にさっきの画像は送っちゃ駄目だよ」
こんな恥ずかしそうに必死なリナリーは珍しいから、なんだか可愛いなぁなんて思いながら。そんな美少女を前につい笑みが漏れる。
それも束の間。
「あ。それもう送っちゃった」
あっけらかんと告げられた言葉に、ぴしりと思考に亀裂が入った。
「…………え。」
な ん で す と。