My important place【D.Gray-man】
第32章 幾恋心
「これどうかな…あ、こっちもいいかも。はい雪、とりあえずこっちも袖通してみて」
「ぃ…いやいやいや。ちょっと待って。待ってリナリー」
「何? 気に入らない?」
「そんなことないけど、とりあえず待ってっ」
朝食後、リナリーに引っ張られるようにその自室に連れ込まれた。
連れ込まれたかと思えば、タンスから引っ張り出した大量の服を押し付けられた。
あれの方が似合う、これもいい、と体に照らし合わせるように当てては、色々と袖を通される。
そのどれもが女性らしいデザインの服。
「なんか着せ替え人形になってる気がするんだけどっ?」
「そんなことないわよ。雪に合う服を真剣に選んでるんだから。はい、腕上げて」
「あ、はい。…って違うッ」
つい腕上げちゃったけど!
本当に!?なんか面白がってない!?
すんごく楽しそうですよ、始終満面の笑顔ですよ!
「うーん、ちょっとイマイチね」
私の腕に通したカーディガンを見て、首を捻りながら取り上げられる。
さっきからこれの繰り返し。
いい加減、疲れてきた。
「服なら自分で買いに行くから…なにも今、着せ替えなんてしなくても」
「それでどうせまた、今みたいな服を買うんでしょ?」
「う。」
駄目だ、見破られてる。
「それに私、誰かにこうしてコーディネートしてあげたことなくって。なんだか嬉しいの」
そう言ってふわりと浮かべるリナリーの本当に嬉しそうな笑顔を見ると、何も言えなくなってしまった。
リナリーはまだ10代の女の子だけど、この教団内に同じ歳の少女はいない。
本当はこうして、普通の女の子として遊びたいんだろう。
そう考えると、リナリーの為に一日着せ替え人形になるくらい、まぁいいかなと思ってしまう。
…そう、思いはしたんだけど。
「でもん、アタシはこっちの方がいいと思うのよねぇ~」
「え、そう?」
「……いやなんでジェリーさんがいるんですか」
当たり前のようにヒラヒラのワンピ片手にリナリーに推薦するのは、ゴツい体のオカマさん。
それは黒の教団の料理長、ジェリーさん。
……なんでそんな人が、此処にいるんでしょう。