My important place【D.Gray-man】
第6章 異変
「とにかく止血。医務室に行こう」
答えが出ないことを悩んでいたって仕方ない。
アレンが口にしていたような言葉を、同じように頭の中で言い聞かす。
自分の体を心配できるのは自分だけ。
自分でどうにかしないと。
──そう思ったんだけど。
「…なんで誰もいないんだろう」
医務室に向かうまで、面白いくらいに誰にも会わないんですが。
肝心の医務室の中も、もぬけの殻。
病棟に人がいなかったことはまだ譲歩するにしても、流石に此処に人がいないのはおかしい。
「婦長さん? 誰かいませんかー」
カラカラと点滴の機器を引きながら医務室の中を歩く。
返答も人影も何もない。
これは流石に不安になる。
広い職場だから、同様に人も多い教団。
面識のない人も沢山いるけど、誰にも会わない日なんてなかったのに。
「すみません、借ります」
とりあえず医務室の棚を漁る。
目ぼしい物を見つけて、額の止血をすることにした。
痛みが治まると同時に、出血も止まったらしい。血の滲んだ絆創膏も取り替えるためにペリペリと剥がせば…ぽつんと二つ、綺麗に並んだ十字傷。
「ファッションにしては無理があるかな…」
鏡で確認しながら一人唸る。
せめて腕とか肩とかだったらマシだったんじゃないかな。
ほら、刺青みたいでさ。
…いややっぱ無理があるな。
「ついでに頭痛薬も貰っておこう」
溜息混じりに、血を拭って大きめの絆創膏で二つの傷を隠すように覆う。
「うん、よし」
前髪を下ろせば、肌色の絆創膏は目立たない。
鏡でその姿を確認して頷く。
これでこっちの問題は一時保留。
後は──
「この状況かな」
ぐるりと人気のない医務室を見渡す。
流石にこんな状況を無視することはできない。
もしまた本部がAKUMAの襲撃なんて受けてたら…って駄目駄目、嫌な予想なんてしたら。
「それに襲撃なんてきてたら、爆発音か何かするはず──」
ドォオンッ!!!
それはまるで見計らったかのように。
「…え。」
大きな爆発音のようなものが、何処か離れた場所から聞こえた。
まじですか。