My important place【D.Gray-man】
第31章 嘘と誠
「…そういう反応するなよ」
「え?」
ギシリと、スプリングが鳴る。
見れば距離を置いてベッドに腰掛けていた神田が、その距離を詰めて──ってちょっと待って!
「ち、近いっ」
「…お前な」
咄嗟に抱いていた枕を突き出す。
盾のつもりで突き出したそれを前に、呆れた声を出したかと思えば、神田の手がむんずと枕を掴んだ。
「そういうことするから、捕まえたくなるんだろうが」
「は?…あ、ちょっとッ」
易々と強い手に引っ張られて、枕を取り上げられる。
枕を横に放って呆れ混じりの顔でこっちを見てくる神田と、目が合った。
捕まえるって…獲物ですか私は。
餌か何かですか。
「すぐ取って食おうなんてしねぇよ。だから逃げんな」
「っ…食うって…私は餌じゃありません…」
「………それはボケてんのか」
いや…はい。
ちょっとボケました。
だって恥ずかしいじゃないですか…!
まさか神田とこんなことする仲になるなんて、思いもしなかったんだから!
美形なんて嫌いだって思ってたし。
暴君なんて恐怖の対象でしかなかったし。
一番そういうことと無縁だと思ってたから、余計に。
「…わかんねぇなら教えてやろうか。別の意味で"餌"だってこ」
「わーっ! ごめんなさいわかります! ちょっとボケただけです許して!」
低い声で私の横に手をついてくる神田に、咄嗟にその肩を押し返して首を強く横に振る。
保健体育の授業とか要りません!
「ったく。そんなに慌てるなら、普通にしてろ。煽るんじゃねぇよ」
すると意外にも、すんなりと神田は体を離してくれた。
…というか。
「………そんな意識全くないんですけど…」
どこを何して煽ったんですか、私。
そんなお色気ムンムンな大人な女性にも、駆け引き上手な小悪魔少女にもなれませんて。