My important place【D.Gray-man】
第31章 嘘と誠
「おい、月城」
「……何」
「なんだそれ」
「…別に」
「別になら取れよ」
「嫌です」
しっかりと抱きしめた枕を盾にして、神田との間に距離を置く。
あの後それこそ足腰立たなくなるまで、好きに咥内を舌で探られて、解放された時にはすっかり息が上がっていた。
今現在は唯一寛げる神田の部屋のベッドの上で、隅っこぎりぎりに座って枕で盾を作っている状態。
「お前な…それ外さねぇと襲うぞコラ」
「っ! もう半分襲ってますけど…!?」
「半分だけだろ。寧ろその状態で手出ししなかったんだ、褒めろよ」
何故褒める。
というかその状態って何。
思わずガン見すれば、同じくベッドに座ったまま膝に頬杖つきながら、神田は深く溜息をついた。
「自分の顔を鏡で確認でもしとけ。そんな顔で外彷徨くんじゃねぇぞ」
「……」
そんな顔ってどんな顔。
わからなかったけど、そんな顔にさせたのは神田の所為だということはわかった。
「…神田って、こんな人だったんだ…」
「……どういう意味だそれは」
多分、まだ赤いんだろう。その顔を隠すように、抱いていた枕に顔を押し付ける。
「異性には全く興味ないと思ってたから…」
神田がラビみたいに、女性に興味を示してるところなんて一度も見たことない。
どんな美女を前にしたって、顔色一つ変えなかった。
だから、こういうこと…する人だなんて想像、全くできなくて。
「ねぇよ別に」
枕に顔を押し付けたまま、ぼそぼそとくぐもった声で言った言葉は聞こえていたらしく。
きっぱりと言い切る神田に、思わず顔が上がる。
「嘘だ」
興味ない人が、あんなことしたりしません。
「その真っ向から否定すんのやめろ。"女"なんて枠組みに興味はねぇよ」
溜息混じりに肩を落とした神田の目が、私を見る。
「俺が欲しいもんなら別だけどな」
「……」
欲しいもの、と口にして。その目は真っ直ぐに私に向けられたまま。
……その言葉が何を意味してるのか、それくらい私にもわかる。
わかるから…顔がまた熱くなりそうで、思わず視線を逸らした。