My important place【D.Gray-man】
第31章 嘘と誠
「──ッは、…っ」
ちゅ、と微かなリップ音を立てて離れる唇。
ようやく解放された時には、ほとんどその体に寄りかかる形になっていた。
というか…と、いうか…ッ
「やっと抜けたな、力」
「っ…こ、んなされたら…抜ける、から…っ」
何これ…!
こういうことするなら、前もって言ってくれませんか…!
あ、いや前もって言われるのもなんか困る!
やっぱりやります宣言はナシで…って何言ってんの私なんか頭回ってない…!
絶対に赤いだろう、その顔で目の前の神田の顔を睨んでみても、相手はしれっとした顔で笑うだけ。
というかなんかやっぱり慣れてない…!?
「絶対、未経験じゃない…」
「あ? まだ言ってんのかそれ」
「相手は女神様ですか…禁断の女性に手を出しちゃったんですか…」
「……だから誰だよ、その女神って」
アイドルはファンに手を出しちゃ駄目なんですよ…。
力なく顔を隠すように俯けば、密着してすぐ傍にある声が更に近付いた。
「女神だかなんだか知らねぇが、俺はこっちの方がよっぽどいい」
「な──…んっ」
顎にかかる手が、私の顔を持ち上げる。
こっちってどっち。
そんな阿呆な問いをかける間もなく、言葉は呑み込まれた。
神田の口に、また深く塞がれて。