My important place【D.Gray-man】
第31章 嘘と誠
「慣れろって言っただろ。ほら、無駄な力抜けって」
「うむ、む……なんか、遊んでない…っ?」
「半分な」
むにむにと両手で頬を挟まれて催促される。
思わず目を開ければ、可笑しそうに笑う神田の顔が見えた。
…あ。
この顔、見たの二度目だ。
思わず魅入って、力んでいた表情筋の力が抜ける。
「──ん、」
その隙を突くように、唇は呆気なく重なった。
柔らかいそれを押し付けられる。
隙間なく重なった唇に、ぬるりと──……ぬるりと?
「っ…?」
唇の隙間に触れる、ぬるりとした感触。
「ぁッ…ん、んッ?」
思わず驚いて声が漏れれば、その隙に呆気なくそれは咥内に侵入した。
し、舌…っ?
まさかこれ舌じゃないですか神田さん…!?
「んぅ…ッ」
反射的に顔を退けば、すぐ後ろのカーテン越しの窓ガラスにコツリと頭部が当たる。
それ以上下がれなくて、そのまま口付けは深くなった。
「ん、ふ…っ…ッ」
咥内を探るように、柔らかい舌が動き回る。
ちゅく、と粘膜を擦るような音が耳に届く。
「ッ! ふ、ッ…ンんっ」
私の舌を追いかけるように、絡みつく温かい神田の舌。
何度も絡められる行為に、どっちのものかわからない唾液が混ざる。
ぞわぞわする。
変な感覚。
ヘブラスカに体を探られていた時の感覚と似ていて、でも全く違う感覚。
背中を走るぞわぞわとした感覚が、下半身に落ちていく。
「っは…ッんン…ッ」
息をしようにも口からは満足に吸えなくて、空気が足りないからか頭が少しぼうっとしてくる。
絡んでいるのはお互いの舌だけなのに、腰の辺りがぞわぞわして力が抜ける。
思わず目の前の体に縋るように服を掴めば、強い腕が抱きしめるようにして支えてくれた。