My important place【D.Gray-man】
第31章 嘘と誠
「そうだな、あって困るもんじゃない」
もう一度カーテンに視線を戻して、上の留め具の具合を確かめていると、ふっと後ろから影がかかった。
「無駄に外を気にしなくてよくなるか」
「…神田?」
振り返ればすぐ傍にその姿はあって、私の横のカーテンに片手を付く。
…えっと?
「外を気にするって…なんのこと」
というか、物凄く近いんですけど。
横にずれて離れようとすれば、もう片方の手がその空いた隣に手をついた。
結果、左右を神田の腕で阻まれて抜け出せない。
………えっと…?
「何しても見えずに済むだろ」
「……」
……何ってなに。
至近距離で逃げ場失くして威圧したいんですか。
そんな寿命縮まることはやめて下さい怖い。
「月城」
威圧ある目から避けるように視線を下げれば、名前を呼ばれた。
どこか優しい声。
「こっち向け」
「…何…」
声に威圧は感じないから、ほっとして顔を上げれば、いつもは高い位置にある神田の顔が屈むように近付いて──…あ。
キス、される。
そう悟った瞬間、反射で目を瞑っていた。
「…だから、そんな力入れんなって」
ぎゅっと結んだ唇に柔らかい感触。
それは一瞬で、すぐ傍で神田の声がした。
「力抜け。無理矢理してる気になるだろ」
そんなこと言われても…
すぐ傍で囁く声。
頬に手が添えられて、促すように唇に軽く指先で触れられる。
「っ…」
恐る恐る目を開ければ──…近い!
近いから!
すぐ目の前にある神田の顔に、慌ててまた目を瞑った。
「お前、どこの珍獣だその反応」
「ぅ。だって…っ」
美形のドアップは心臓に悪いんですよ…!
「さっきは我慢してやったんだ。俺の言うこと聞け」
「さっきって…何、それ」
我慢っていつ我慢したの。
というかなんの我慢したの。
……いややっぱり答えなくていいです。