My important place【D.Gray-man】
第31章 嘘と誠
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「うん、ぴったり!自室は何処も同じ窓枠サイズでよかった」
「…別に必要ねぇって言っただろ」
「これは神田の為じゃなく、このお花達の為です」
修練場を後にしてやって来たのは、神田の自室。
前に用意していたそれを運んで早速と取り付ければ、案の定サイズはぴったりだった。
神田の部屋は必要最低限のベッドと棚以外、何もない。
窓にカーテンもないから、いつも日光は遠慮なく降り注ぐ。
棚の上に置かれた、大きな花瓶に入った沢山の花々。
バレンタインギフトであるそのお花達の為に、私は用意していた暗い色のカーテンをその部屋に取り付けた。
「切り花って、実はあんまり日光に当てない方が長持ちするんだって。ラビから聞いたんだ」
あの兎さん、物知りだから。
「あの馬鹿兎…余計なこと教えやがって」
「なんで」
「丹念にそんな世話するから、いつまで経っても片付けられねぇだろ」
「お世話係に任命したのは神田でしょ。私は頼まれたことをやってるだけです」
「……」
確かに嫌でも目につく程主張してくる大きな花々は、ちょっとこの部屋に不釣り合いだけど。
でも元が何もない部屋だから、少しは明るくなっていいと思うんだけどなぁ。
「それに日差しを避けるだけじゃなく、防寒にもなるし」
「んなの平気だっつったろ」
「神田じゃなくお花の為の防寒です」
「……」
本音は神田の為もあるけど。
まぁ風邪はひかない体だし、やっぱり大半はお花の為かもしれない。
「別にあって困るものじゃないし。そんな顔しないの」
カーテンを引いて日光を遮断しながら、振り返って未だに渋い顔をする神田に笑いかける。
するとその顔は諦めたように溜息をついた。
よし、勝った。