My important place【D.Gray-man】
第31章 嘘と誠
「月城」
「ぁ…うん、」
出口前で振り返った神田が、私を呼ぶ。
リナリーの言葉は気になったけど、折角アレンと喧嘩にならなかった神田を、下手に待たせて機嫌悪くさせたくないし。
慌てて持ってきていたお茶やタオルを手に、リナリー達に軽く会釈した。
「じゃあまたね、二人共」
「…はい。また今度、組み手つき合って下さいね」
「神田のことよろしく、雪」
同じに軽く会釈するアレンに、リナリーはにこにこと私に笑いかけていた。
…バレンタインの時から、何かとリナリーって神田絡みで突っ込んでくるようになったんだよね…。
前は適当にあしらってたけど、今の神田との関係では下手にあしらえない気がする。
……ボロが出る前にさっさと退散しよう。
「うん。それじゃっ」
小走りで神田の下に向かう。
足を止めて待っていてくれた神田は、眉間に皺なんて寄せていなかった。
無表情だけど静かないつもの顔。
アレンがいればよく渋い顔してたのに…それより優先したいことってなんなんだろう。
珍しいなぁ。