My important place【D.Gray-man】
第30章 想いふたつ
「…おいモヤシ」
「アレンです」
「消す前に、その日の記録を見せろ」
「見せろって…雪さんと一緒にいたなら見なくても神田は知ってるでしょ」
「いいから見せろ。テメェは見んな」
「……喧嘩売ってるんですかそれ」
眉間に皺寄せるモヤシに、また言い合いになりそうな予感はしたがこれは譲れなかった。
恐らく映っているかもしれない、泣きそうに歪ませていたあの時の月城の顔をモヤシに見せたくなかった。
「まぁ…僕も見るつもりはないけど」
意外にも溜息混じりにそう呟くと、モヤシは肩のティムを掌に乗せて俺に差し出してきた。
なんだ、案外聞き分けいい時もあるんじゃ──
「ただし。タダでとは言いませんよ?」
にっっっこり。
そんな効果音が付きそうな程の黒さ全開で、モヤシは笑った。
「然るべきもの、払って下さいね」
親指と人差し指で輪っかを作るそいつが求めるものがなんなのか、聞かずともわかった。
クロス元帥の借金で金にがめついことは知ってたが……こいつ…
「仲間内ですし、桁5つ程で譲歩しておきます」
「どこが譲歩だ、どこが!」
思いっきり大金せびってんじゃねぇか!