My important place【D.Gray-man】
第6章 異変
ギィ…
トイレのドアがゆっくりと開く音。
ああ、やっぱりトイレに来た誰かなのか。
そう思ってほっとする。
「……」
いやいや普通そうでしょ。
ホラー映画の見過ぎだから。
バタン、
ドアの閉まる音。
普通にトイレを使用しているだけだろう、そんな人に恐怖心を抱いたなんて。
恥ずかしくて自分で自分に内心喝を入れる。
こんな所で怖がるな、それこそラビ辺りに知られたら今度こそ爆笑される。
…あ、でもラビもホラーものは苦手だったっけ。
とりあえず病室に戻ろう。
そう結論付けてドアノブの鍵に手を掛けた。
──カツン、
その時、再びあの足音を聞いた。
カツン、カツン、…ギィ…バタン、
足音と、ドアの開閉の音。
そして。
カツン、カツ…カツン、…ギィ…バタン、
再び同じ音。
何人もトイレに来たのなら当たり前の音だけど、あまりにもそれは不自然な音だった。
ゆっくりと近付いてくる足音。
そしてドアの開閉音。
これ…間違いない。
誰かが、トイレを端から順番に開けてきてる。
そう悟ると、背中に寒いものが走った。
カツン、…カツ…カツン、
見回りの看護師さんだということもある。
でもこのトイレの中も廊下同様、薄暗い。
中を確かめているのなら、ライトの一つも持っているはず。
だけどトイレのドアの下の隙間から、それらしき光は見えない。
ギィ…バタン、
此処へ来た時、誰もトイレにはいなかった。
となるとトイレに鍵をかけているのは、私が入ってるこの場所だけ。
一番奥の個室トイレ。
確か私が入った其処は──端から5番目。
カツン、カツン、…カツ、
すぐ傍まで来た足音が止まる。
咄嗟にドアノブから手を離す。
ガチャ、
同時に外からドアノブが回された。
ガチャ、ガチャ、ガチャ
何度も何度も。
鍵の掛かったドアを開けようとするかのように、ドアノブが不規則な音を立てる。
普通の人なら誰か入ってるのかと声をかけたり、ノックをするはず。
なのにガチャガチャと、それは無言でドアノブを回し続けた。
一体、これは誰。