My important place【D.Gray-man】
第30章 想いふたつ
「ちゃんと自分で調べて…知ったから。神田の体のこと」
「……」
「確かに、高い治癒力を持ってるけど……でも…不死な訳じゃないでしょ…?」
俺の手首を掴んで止めたまま、月城がぽそぽそと口にする。
それは確かに俺の"体"のことだった。
「その体にも…"限り"があるんでしょ…だから無理しちゃ駄目だよ…」
俺の手首を掴むその小さな手に、力が入る。
もう俺の体は完治してる。
それは自分の五感でわかる。
それでも月城は俺が意識を飛ばす前と同じ、まだ不安を纏っているようだった。
「…俺は死なねぇよ」
「神──」
「俺が死んだら、お前泣くだろ」
月城の発言を言葉で遮って止める。
あの時強く感じたんだ。
だから死んだりしねぇよ。
「泣いてただろうが。俺が闘技場でやられた時」
「………泣いてないよ」
上がった月城の顔は俺を見ながら、ぎこちなく首を横に振った。
確かに月城の言う通り。物理的には、こいつは泣いていない。
歯を食い縛って耐えるように呑み込んで、一滴もこいつは涙を流さなかった。
「似たようなもんだろ。あんな顔してたら」
でも俺には、泣いているのと同じだった。
痛々しい程に顔を歪めて何度も俺の名前を呼んで、必死に耐えているあの姿は。
教団の中庭で月城の泣きそうな目を見た時と同じに、俺の胸を強く鷲掴んだ。
「俺が死んだら、誰がそんな面倒な涙拭くんだよ」
手を伸ばす。
その目元に触れた指先で、皮膚の上を優しくなぞる。
涙一つ流すのだって耐えようとする月城の姿はどこか痛々しく見えた。
面倒だとは思うが、涙を呑み込むその姿が嫌だった訳じゃない。
ただ、強く放っておけないと思った。