My important place【D.Gray-man】
第30章 想いふたつ
目を開く。
最初に見えたのは、病室であろうその部屋の天井。
「……」
「何固まってんだ。こっち向けコラ」
気配がする方へ目線を向ければ、病室のドアの前で背中を向けたまま固まって動かない月城が見えた。
聞こえてんだろ、何カカシみたいに突っ立ってんだよ。
「…か、神田…?」
ゆっくりと体を起こす。
まるで壊れた機械のようにぎこちなく首だけ振り返った月城が、俺を見てこれまた更にぎこちなく名前を呼ぶ。
体中に巻かれたきつい包帯に触れながら再度目を向ければ、弾けたようにそいつは駆け寄ってきた。
「目、覚めたんだ…!」
抱えていた桶を机に置いて。
…なんだそれ。
「体の調子は? まだ痛い? 動かし難いところとか…あ、水持ってこようか?」
「いい。平気だ」
首の包帯がきつくて外そうとすれば、慌てた月城が止めにかかる。
「駄目だよ、まだ。お医者さんが外したら駄目って…」
「もう治ってる」
「まだ三日しか経ってないんだよっ? お腹の怪我は治ってるかもしれないけど、そこはまだだってっ」
その言葉を無視しようとすれば、手首を掴まれて無理にでも動きを止められた。
なんだよ、お前看護師じゃねぇだろ。
「なんで俺の体のことをお前の方がわかってんだよ。これは俺の体だ」
「それでもッあんなに酷い怪我したんだから…!」
「平気だっつってんだろ。自分の体のことはよく知っ」
「知ってるよ!」
俺の体は俺が一番よくわかってる。
そう当たり前のことを口にしようとすれば、それを強い言葉で止められた。
月城にしては珍しいその剣幕に、つい声が止まる。
「……私も、知ってるよ…教えてくれたでしょ、ちゃんと。…第二使徒のこと」
俯きがちにその口から出てきた言葉は、予想外のものだった。
…月城に"第二使徒"のことは教えたから、その予想はしていなかったと言えば嘘になる。
それでも月城は一切そのことを口にしなかったから、自然と俺も気にならなくなっていた。
だからこそ驚いた。
そのことを口にした月城に。