My important place【D.Gray-man】
第30章 想いふたつ
「ちゃんと…待ってる、ならな」
再び目を閉じる。
視界が暗闇に包まれると簡単に意識は薄れていって、体はそれだけ限界だったんだと悟った。
「…待ってるよ」
意識が微睡んでいく最中、最後に聞こえたのは。
「ちゃんと、待ってる」
小さな、でも確かにはっきりとした意思で紡ぐ月城の返事だった。
"──…待ってる"
それは俺の中にある記憶が残した、"あの人"の最後の言葉とどこか重なる。
でもはっきりと、それは違うもんだと思えた。
…当たり前か。
月城は月城で、あの人はあの人。
同一人物なんかじゃない。
当たり前のことなのに、そうはっきりと思える気持ちにどこかすっきりとして。
頭部に感じる肌の柔らかさに身を預けるように、意識はすっと落ちていった。
それはとても心地の良い、微睡みの闇だった。