My important place【D.Gray-man】
第30章 想いふたつ
「──…いっ…て…」
「大丈夫かい?ユウ」
「大丈夫に…見えんのか、これが…」
「…じゃ、ないな。ごめんな、応急処置しかできなくて…」
血生臭さが染み付いた体。
千切れた手足。
血だらけの実験室の真ん中で転がっていた俺に、慌ただしく真っ先に駆けてきたのはエドガー博士だった。
激痛でまともに動けない俺の体を、博士の覚束ない手が手当てしていく。
"イノセンス"なんていう、得体の知れない物。
それと同調しないと、俺はエクソシストになれないらしい。
俺の目の前に既に敷かれた道は、そのエクソシストというものになることだった。
その為に、何度も同調テストを繰り返す。
何度も、何度も。
手足が千切れても、何度"死"を迎えても。
やっとそのテストから解放された時は、いつも意識が朦朧としていた。
「トゥイ支部長の方が、こういうの得意なんだけど…」
辿々しく言いながら、その手は優しく俺の体の血生臭さを拭っていく。
血を拭き取って、千切れた手足に包帯を巻いて。
再生のし過ぎで脆くなってる俺の体を、労るかのように。
「よし、できた。ユウ、動かすよ?」
「…ん」
広い背中に背負われて、実験室を後にする。
人の温もりなんて知らない。
なのにその広いエドガー博士の背中に触れていると、自然と少しだけ落ち着いた。
「バクのことも、昔はこうしてよく背負ってベッドまで運んだっけなぁ」
「…バク?」
「私の子供だよ。ほら、前に話した」
「ああ…」
目の前の柔らかそうな金色の髪を見つめて、未だに朦朧とする頭でぼうっと考える。
エドガー博士とトゥイ支部長は"おとうさん"と"おかあさん"で。
二人が"あいしあう"ことで、子供は生まれるらしい。