My important place【D.Gray-man】
第30章 想いふたつ
倒れたまま動けないでいる俺に、緋装束に仮面を付けた二人組の人間が、左右から俺の体を持ち上げる。
確かこいつら…"鴉"とかいう、薄気味悪い連中だったはず。
俺とアルマを監視するかのように、静かに距離を置いていつも見てくる奴ら。
そいつらに体を引き摺られて、俺の体に繋がれた無数のコードが引っ張られてずるずると地面で擦れた。
『アルマ心拍停止しました。再生まで420秒』
…アル…マ…?
………あいつも…やってんのか……これ…
『大丈夫だ! セカンドなら必ず適合者になれるはずだ! 出来損ないとは違う…ッ人間の希望になってくれ!』
出来損ない…?
誰のこと言ってんだ、それ……
……つか、テメェが出来損ないなんじゃねぇのか…
…そうやって、上から物を見てるだけしか…できえねぇ奴が…
偉そうに……他人を批判してんじゃねぇよ……
『ユウ、シンクロ開始します』
引き摺られる体は強制的に、また目の前の"イノセンス"に接触させられる。
首と腕のない奇妙な羽の生えた、人のような形のそれ。
それに触れると伸びた羽が俺の体に潜り込んで、好き勝手暴れ回る。
体の中からぐちゃぐちゃに掻き回される感覚。
──ピキ…ピキ、ピキ…ビキ…
嫌な音が体内から漏れ出る。
ああ、クソ。
"また"だ。
「くそったれいのせんす…」
そう吐き捨てると同時に、体の内側から風船が破裂したような衝撃が一気に襲った。
──ビシャッ…!
狭い部屋一面に飛び散る赤。
それが俺の体内から出たもんだと悟ると同時に、崩れた体はピクリとも動かず赤い水場に落ちた。
霞んで暗くなる視界。
痛みも熱さも寒さも何もかもわからなくなって、意識がぷつりと途切れる瞬間。
『ユウ再生まで約580秒です』
最期に耳にしたのは、いつもと変わらない数値を読み上げるレニーの声だった。
そして俺の体はまた"死んだ"。