My important place【D.Gray-man】
第30章 想いふたつ
──バシュッ…!
体中が破ける。
風船みたいに簡単に破裂した体のあちこちから噴き出る、真っ赤な俺自身の血。
「がっ…ああぁあぁああ!!!」
痛い
痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛いいたいいたい痛いいたい痛いいタイイタイイタイイタイイタイイタイ
『ユウ! 落ち着け! ただのショックだ、咎落ちじゃない!』
暗く狭い部屋の"外"から聞こえてくる声。
クソ、阿呆サーリンズめ。
何がただのショックだ、じゃあテメェが受けてみろよ。
体中を走る強烈な痛みに、それ以外のことが脳内から弾き出される。
"痛い"という感覚しかない。
叫んでいないと頭が可笑しくなりそうで、風船みたいに弾けた足は立っていることもできない。
『レニー、損傷具合は?』
『再生まで約510秒。380秒程で動作可能になります』
『サーリンズ博士!』
"外"から聞こえてくる、幾つもの声。
倒れ込んで動けない俺の体から、ジュウウと焼き焦がすような音が上がる。
同時に激しく突き刺すような熱と痛みが薄れていく。
『聞こえるかユウ、もう一度だ』
「は…っ…はぁ…っは…ッ」
短く息をつくのがやっとで、応えられない俺にサーリンズが呼びかけてくる。
『もう一度、イノセンスと同調しなさい』
〝イノセンス〟
俺の目の前にある羽の生えた人のような形を象ったそれは、そういう代物らしい。
『無茶はよせ、サーリンズ!』
『無茶? 咎落ちになってないのだぞ。大変な成果だ』
生理的な涙が目から溢れて、短い息をすることしかできない。
口の中は何度吐いたかわからない濁った血で、息が詰まった。
『過去90年の実験の中でここまでの同調テストを行って、咎落ちにならなかった被験体は皆無だった! 後は結果さえ出せれば第二使徒計画を本格的に導入できる!』
『博士!』
煩ぇ。
人がまともに息もできねぇ時に、外からごちゃごちゃ余計な話してんじゃねぇよ。