• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第29章 想いひとつ



「無闇に押し付けたりはしないからさ…だからせめて、抱えさせていてね」


 年相応に見える神田の寝顔を見ながら、そっと囁く。

 抱えてしまった想いだから、応えて欲しいって気持ちはある。
 神田が譲れないものの一つに、私も入れてもらえたら。
 そんな浅はかで贅沢な願い。

 でも私の根本の思いは、変わらない。
 初めて神田の体のことを知って、神田の過去のことを知って、あの暗い夜の書庫室で強く感じた思い。


 この人の傍にいたい。
 一人で立って生きている神田の隣に、私はいたい。


 それは何よりも強く変えられない思いだから。


「……」


 もしその場所を失ってしまうなら、下手な想いはぶつけない方がいい。

 だから──





「……好き」





 微かに消え入りそうな声で紡ぐ。

 …この想いは云わない。
 いつか云える日がくるかもしれないけど…今はまだ。
 こうして、近くで神田の存在を感じていられるなら…それでいいから。


「…なんか照れる…」


 ちょっと口にしただけで思わず熱くなる自分の顔に、片手を当てて苦笑い。
 そっと最後に神田の長い髪先を撫でて、腰を上げる。


「じゃあ、ゴズと闘技場の事後処理してくるから」


 それだけ伝えてタオルと桶を手に、背を向けて部屋を出た。










 出ようと、した。










「言い逃げか、いい度胸してんな」










 ……その足を止めたのは、凄まじい程に背中に感じた威圧でした。

/ 2637ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp