My important place【D.Gray-man】
第29章 想いひとつ
「──はい、終わり」
一通り体を拭き終えて、手早く服のボタンを閉めていく。
「髪は流石に洗えないから、早く起きてよね」
結んでいないサラサラの長い黒髪に触れる。
洗えていないのに、指の隙間からさらさらと落ちていくキューティクルたっぷりの黒髪。
…くそぅ、なんか悔しい。
「…下手したらリナリーより美髪じゃないかな、これ…」
いや、リナリーも凄い美髪だけどね。
でもリナリーのあの綺麗な髪がAKUMAとの戦闘で燃えちゃってからは、長髪で綺麗な髪の持ち主は、教団では神田だけになってしまった気がする。
「手触りいいなー…羨ましい…」
なんとなくその触感が気に入って、何度も神田の髪を手で梳く。
さらさら、さらさら。
零れ落ちていく長い黒髪。
こうやって寝てる時くらいしか、触らせてもらえないだろうし……よし。
今のうちに沢山触っておこう。
「早く起きないと、三つ編みにするぞー…」
こんなに長い髪なら結び甲斐ありそうだなぁ、なんて思いながら、ぼんやりとそんな言葉を投げかける。
二つ結びで三つ編み姿……うん、想像したら笑え……いや、ガチで綺麗な女性に見えるかもしれない…。
……。
……やっぱり世の中不公平な気がする。
同じ人間なのにここまでパーツが違うと…なんか凹む。