My important place【D.Gray-man】
第29章 想いひとつ
─────────
「あ。雪さん、神田の所に行くんですか?」
「うん。体拭きに」
「手伝いましょうか」
「大丈夫。それよりゴズを見張っててくれる? 一人で事後処理しようとしてたから、後で一緒にやるから待っててって」
「わかりました。…でも雪さんも無理しないように。ずっと世話役してるでしょ。病院の人にしてもらえば──」
「ううん」
軽く首を横に振って、笑いかける。
「私がしたいからしてるだけ。だからいいんだ」
私が傍にいたいから。
はっきりと言えば、アレンは少し間を置いて僅かに苦笑した。
「…そっか」
「じゃあ行くね」
「はい。神田が目覚めたら教えて下さいね」
「勿論」
軽くアレンに手を振って別れて、病院の廊下を進む。
あれから三日間。
神田は深い眠りに落ちたまま、未だ目覚めていない。
元々まともな食料も口にしていなかったし、三日三晩戦い続けたりその後も地下通路を彷徨ったり、色々と体を酷使していたから。
その反動か、怪我の酷さなのか、それはわからないけど…。
急いで闘技場から街の病院まで連れていくと、そのまますとんと深い眠りに落ちてしまった。
不安はまだある。
体の怪我もまだ完治はしていない。
でも…
「神田、体拭きにきたよー」
個室の病室に入って、持ってきていたお湯の張った桶を机に置く。
「今日もいい天気だよ。賞金稼ぎの人達もいなくなったからか、街も活気溢れてるし」
窓を開けて空気の入れ替えをしながら、話しかける。
返答はない。
ベッドに歩み寄って、静かに眠っている神田の様子を見る。
分厚い包帯を巻かれたその胸は、僅かに呼吸で上下していた。
生きてる。
ちゃんと呼吸している。
それだけで、ほっと安心する自分がいる。
不安はまだ残ってるけど、ちゃんとこうして生きていてくれているから。