My important place【D.Gray-man】
第29章 想いひとつ
「神田!」
「神田さん!!」
バタバタと慌ただしく駆け寄ってくる音。
顔を離して振り返れば、顔面蒼白で駆けてくるアレンとゴズの姿が見えた。
「雪さん! 神田は…!」
「神田さん死んじゃ駄目ですぅう!! 神田ざぁああん!!!」
「………うぜ…」
覗き込んでくる二人に、未だ濁った声で神田が悪態をつく。
眉間に皺寄せた顔はいつものもの。
ただ、まだその顔は青白く口からも吐血していたけれど。
体も動かないのか、私の膝に乗ったままの頭は動かない。
「か、神田さん…!? 今"うぜ"って言った!? 言いましたよね!?」
「よかった…!」
歓喜の声を上げるゴズに、ほっと大きな息をつくアレン。
でも今は喜んでる暇はない。
一命は取りとめたけど、このまま体も自己回復に向かうのかもしれないけど。
それでも手当てはしないと。
このまま放ってはおけない。
「嫌…嫌よ、ビットリオ…ッ!」
不意にその場に響く悲しい涙声に、はっとする。
目を向ければ、倒れたビットリオに縋るクラウディアさんの姿があった。
その顔からボロボロと零れ落ちていくのは無数の涙。
縋り付いているビットリオの体は──…屈強な筋肉の付いたものではなく、カサカサとミイラのような肌へと変わっていた。
…恐らく神田に敗れて、呪縛のように憑いていたイノセンスの力から解放されたんだ。