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My important place【D.Gray-man】

第28章 ローマの剣闘士



 ガキッ!


「く…っ!」


 競り合う大剣と六幻。
 見た目は明らかに六幻の方が細く華奢に見えるのに、競り押しているのはその六幻だった。


「惨めに後悔でもする気か? 俺は、んなの真っ平ごめんだ」


 強い言葉。
 迷いなき言葉。

 神田はそう。いつもその心に確固たる信念を持っている。
 アレンにも勿論あるけれど、きっと神田がその信念を向けているのは極僅かなものに対してだけ。





『譲れないもんなんて、一つあればいい』





 そう前に言っていた神田の言葉を思い出す。
 その譲れないものがなんなのか気になるけど、きっと簡単には教えてくれないから聞けない。

 知ったとしても、それでどうするのか。
 きっとどうしようもないんだろうけど…それでも気になってしまう自分がいる。

 神田が何より譲れないもの。
 大切に思っているもの。
 それはなんなのか。

 私の譲れないものの一つに神田が入っているように、許されるなら…私も神田のその枠の一つに入れてもらえたら。
 そんな浅はかなことを思ってしまう自分がいる。


「…はぁ」


 …本当、浅はか過ぎて溜息が出るくらい。










「…そうだな」


 神田の言葉に応えたのは、アレンじゃなかった。
 目の前で競り合っている大剣の持ち主。


「俺も何に代えても守りたい人がいる。その人の為なら…鬼にでも悪魔にでもなれる…!」

「っ!」


 ぶわっ!と大剣から発する威圧。
 まるでビットリオの意志に応えるかのように、イノセンスがビシビシと強く反応している。

 圧された神田の六幻を持つ手が、僅かにずれる。
 その隙をビットリオは見逃さなかった。


「邪魔立てするな!」


 ビットリオが吠えると同時に、それに応えるように大剣から強烈な威圧が飛ぶ。


「ッく、」


 ギャンッと払われ六幻が弾かれる。
 そのままぶおんっと振るわれた大剣は空を大きく裂いて──


「神田…ッ!」


 アレンの声。





 ザシュッ…!





 肉を断ち切る音が、その場に鋭く響いた。

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