My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「そして俺が勝ち続けることを願っている。俺はその願いに応え続けなくてはならないッ」
「目を覚まして下さい! 貴方の戦いはもう終わってるんです!」
「終わってなどいない!」
強く否定したビットリオの剣がアレンに向く。
ガキンッ!とそれを左腕で受けて、アレンはしかとその目でビットリオを見据えた。
「…貴方は…もしかしたら、サンドラ姫が好きだったんじゃないんですか?…だから他人には渡したくなかった」
「ッ…俺は姫の命令に従う剣闘士! ただ姫の命令に従っていただけだ!」
「その貴方が守ろうとしている女性が、貴方の行いで危険に曝されるんですよ…っ剣を置いて下さい!」
「黙れ!」
大剣で強く薙ぎ払われ、アレンの左腕が弾かれる。
左腕でアレンはビットリオの相手はできない。
でもだからって、退魔の剣ではビットリオに勝つことはできない。
「貴方が戦いを止めなければ、クラウディアさんが危ないんです…!」
勝ち目がない故の説得じゃない。
クラウディアさんの為に、そしてビットリオの為に、アレンはああして叫んでいるんだ。
「退け」
それを遮ったのは、低い声。
ギィンッ!
「ッ…!」
鋭い斬撃に、大剣でそれを防ぎつつもビットリオの体が押される。
「神田…っ」
「甘いことばっか言ってんじゃねぇよ。止まらないなら力尽くで止めるまでだ」
顔を歪めるアレンに容赦ない言葉をぶつけて、その目は真っ直ぐに目の前のビットリオを捉えていた。
「神田、ビットリオさんは…ッ!」
「こいつの私情がなんだ。それであの女を死なせたら元も子もねぇだろ」
「っでも…ッ」
「だからテメェは…甘いんだよ!」
「ッぐぅ…!」
息つく間もなく繰り出される神田の斬撃に、ビットリオの体が徐々に押されていく。
「情で周りを見失って大事なもんを守れなかったら、テメェはどうすんだよ!」
声は後方のアレンに、攻撃は目の前のビットリオに。
ギン!と何度も鋭い鉄がぶつかり合うような音が、その場に響く。
あんなに沢山いたレベル1のAKUMA達は、神田達によって全て倒されたのか。何処にも見当たらない。