My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
瓦礫の陰に隠れるようにしてAKUMAに見つからないように進みながら、なんとかクラウディアさんの所まで辿り着いた。
「クラウディアさんっ」
「!」
「待って!」
私を見た途端逃げ出そうとするその手を、咄嗟に強く掴む。
「連れ戻そうとしてる訳じゃないから! 逃げないで!」
「え?」
家が嫌で逃げ出したなら、無理に其処へ連れ戻そうとは思わない。
ただ、
「でも此処に居るのは駄目、クラウディアさんには危険過ぎる」
こんなAKUMAとの戦闘だらけの毎日、普通の人間には危険過ぎる。
いくらビットリオが相当の手練れであっても、クラウディアさんの命はこれじゃ幾つあっても足りない。
「クラウディアさん、気付いているんでしょ…ビットリオが貴女をサンドラ姫だと思い込んでるってこと」
「……」
問いかけに彼女は答えない。
それが既に"答え"だった。
「ビットリオがあの大剣を振るう限り、AKUMAは寄ってくる。それを止める為にも、クラウディアさんの口から言ってあげて。自分はサンドラ姫じゃないって」
「………嫌よ」
え?
「私を…サンドラ姫と間違えていてもいい…あの人と一緒に暮らせるなら」
「なんで…」
返されたのは"拒否"だった。
予想外の言葉に耳を疑う。
「ビットリオは私を救ってくれたのよ。何一つ自分で決められない、捕らわれの身のようなあの生活から…唯一、私を救ってくれた人なの」
ゆっくりとクラウディアさんの目が私に向く。
そこには強い意志が表れていた。