My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「いくぞ」
神田が六幻を振るう。
ヒュッ
空気を切るような微かな音。
それが幾つか聞こえたように思えた。
ただそれだけ。
そして一瞬の沈黙の後。
「!」
ドパッ!と一気に斬り刻まれた天井の分厚い壁が、瓦礫と化して落下した。
「"破壊ノ爪(エッジエンド)"!」
大きく左腕を呻らせて、アレンが落ちてくる瓦礫を全て弾き飛ばす。
下手に地下のカラクリを作動させないよう、全て穴の"向こう側"へと。
同時に体に巻き付いたマントと"道化ノ帯"によって、ぐんっと体が引っ張られた。
咄嗟に瞑ってしまいそうになった目を、意識でなんとか強く開く。
ちゃんと動けるように、周りを見ておかないと。
「出るぞ!」
ダンッ!と強く壁を蹴り上げて、神田が"向こう側"へと跳ぶ。
落ちる瓦礫をアレンの左腕が弾きながら、同じに引っ張られてぽっかりと空いた穴の外へと抜け出す。
真っ先に見えたのは綺麗に輝く星空だった。
でもそんな星空に目を止める暇もなく。ふっと、その視界に動く影が映る。
「アレン! 4時の方向!」
咄嗟に声を出せば、そこ目掛けてアレンの左腕が呻る。
ザシュッ!と音がして左腕の爪が断ち切ったものは、球体状のレベル1のAKUMA。
「うわわ…! AKUMAだらけですよ雪先輩…!」
見れば綺麗な星空の下。幾つも浮かぶ、球体のAKUMA達の姿が其処にはあった。