My important place【D.Gray-man】
第6章 異変
「なんでって、雪の見舞いに来てやったんだろ?」
「そうです。決して美味しそうな匂いに釣られた訳じゃありません」
「食い意地を何処でも張るのはやめなさい、みっともない」
「もう、リンクはうるさいな。お見舞いに来たんじゃないなら、どっか行ってて下さいよ」
コムイ室長の指示で、教団内の病室に入院する羽目になって早三日。
一番関わりのある神田は一度だって顔を見せなかったけど、代わりにこのエクソシスト二人と中央庁の方がお見舞いに来てくれた。
当たり前に答えるラビの隣で、差し入れされたフルーツ盛りを見せて首を横に振るアレン。
うん、食べたいんだね。
いいよ、一生懸命カットしてくれたし。
だからリンクさんと喧嘩はしないで。
此処、病室だから。
「一人だと暇だし、誰であっても来てくれたら嬉しいよ。はい、アレン林檎」
「雪さんがそう言うなら…」
林檎を差し出し言えば、渋々大人しくなるアレン。
うん、アレンを大人しくさせるには食べ物が一番だね。
「ユウとじゃいつか大怪我すると思ってたんだよな」
「あんなパッツン馬鹿との任務、断ってもいいんですからね」
ぽんぽんと労うように肩を叩いてくるラビに、林檎をもぐもぐしながら助言してくるアレン。
どうやら私の入院理由は公には広まっていないらしい。
「んで、さ」
不意に肩を叩いていたラビの手が止まって、がしりと肩に腕を回される。
何、近いんですけど──
「方舟の暗証番号、ド忘れしたってホントさ?」
………誰だこの兎に余計なこと言ったのは。
「暗証番号をド忘れ?」
「そうそう、聞けよアレン。雪の奴、帰りに暗証番号間違えてさー。方舟使えなかったんさ」
「…誰に聞いたんですか」
「あ、やっぱホントさ? すげぇ見たかった」
問えば、ケラケラと面白そうにラビは笑うだけ。
誰だこんな面倒な奴に教えたのは。
「た、偶々ですよ。誰だって失敗はします。ね?」
アレン、今そんな優しいフォロー要らない。
羞恥心が増すだけだから。
「致命的ミスですね。危機管理が足りてない証拠です」
ごめんなさい、すみません。
やっぱり優しいフォローでお願いします、リンクさん。