My important place【D.Gray-man】
第6章 異変
✣ ✣ ✣ ✣
「…はぁ」
入院ベッドの上で深々と溜息一つ。
右腕には心拍数や血圧を測る機器があちこち取り付けられていて、左腕には点滴の管。
脇腹の傷は散々検査された挙句、大袈裟な程の包帯がぐるぐる巻きにされていた。
なんですか、この状況。
「超重病患者って感じさな」
正にラビの言う通り。
「もう病院食は嫌だ…」
「ほ、ほらっ林檎ありますよ。食べますか?」
顔を両手で覆って嘆けば、気遣うように林檎を差し出してくる手が一つ。
一生懸命カットしてくれた、ちょっと歪(いびつ)な形の林檎。
そこから辿るように視線を向ければ、真っ白な髪が飛び込んでくる。
一瞬お爺さんにも見えなくもないその白髪の下にあるのは、ラビよりも幼さの残る顔。
AKUMAのシンボルである星型のペンタクルと同じ形の痣を、左目の上に持つその少年はラビ同様、若いエクソシストの一人。
アレン・ウォーカー。
「ウォーカー、なんですかその剥き方は。こちらをお食べなさい」
その横から、ずいっと綺麗にカットされた林檎を差し出してくる別の手。
同じように辿るように視線を向ければ、神田に似た綺麗に切り揃えられたぱっつんの髪に切れ目が見える。
額の中心に赤い二つの黒子のような不思議な模様を持った金髪の男性は、アレンの監視役として最近傍にくっ付いている中央庁の方。
ハワード・リンクさん。
中央庁は黒の教団同様、ヴァチカンが抱えている組織の一つ。
監査や監視が主な役目だから、厳しい考えの持ち主も多いイメージなんだけど…リンクさんもやっぱり教団の人間と比べるとテキパキした、規律に厳しい性格をしていた。
「どちらも、ありがとうございます」
そんな二人からありがたく林檎を受け取って、しゃりしゃりと口の中で租借する。
林檎はファインダーの仲間が、先日お見舞い時に差し入れしてくれたものだった。
美味しいなぁ…じゃなくて。
「というか、なんで此処に?」
今更だけど。