My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「下手にビットリオのイノセンスを起こさないように、神田さんはずっとイノセンスの力を使わず戦ってたんですが…これが中々、相手も手強くて」
「次は勝つ。さっさと捜すぞ」
「あ、待って下さいよ神田さんっ」
スタスタと先頭を歩き出す神田に、慌ててゴズも後を追う。
「ビットリオさんも問題ですが…クラウディアさんのこともどうにかしないとですね…」
「だね」
隣を歩くアレンの言葉に、背中の荷物を背負い直しながら私も頭を悩ませた。
本人が戻る気がないなら、ビットリオから離すことは早々できない。
まぁあんな親や婚約者なら、逃げ出したくなるのもわかるけど…。
「…クラウディアさんって美人だよね」
「え? なんですか急に」
「…もしかしたら似てるのかも。ビットリオが守ってたサンドラ姫に」
じゃなきゃ、簡単に仕えている人を間違えたりしないと思う。
クラウディアさんに"強い男は現れない"って報告に行ってたみたいだし…それが何よりクラウディアさんをサンドラ姫として見てる証拠だ。
「だとしたら、忠誠心の高い剣闘士だったんでしょうね。千年経っても言いつけを守り続けるなんて…」
「……それだけじゃないのかも」
「え?」
「…グゾルはララのことを愛してたでしょ。相手が人形であっても、人の心で」
南イタリアのマテールで出会った、老人と人形。
その二人の間にあったのは、確かに"愛"だった。
「千年も守り続ける程の思いがあるなら…それはもしかしたら、愛に近いものかもしれない」
人を想う気持ちは何よりも強い原動力になる。
それはあのゾンビ化事件でも、バク支部長達を見て感じたこと。
「…それなら尚更、どうにかしないとですね」
思い出すように暗い天井に向けていた目を、隣から届いた声に向ける。
「クラウディアさんはサンドラ姫じゃない。そのことをちゃんと、ビットリオさんに教えてあげないと」
そう笑うアレンの顔は優しくて、でも確かに強い意思のある目をしていた。
ララとグゾルを守ろうとしていた時のように。
…うん。
やっぱりそういう他人を思える真っ直ぐな気持ちは、アレンだから持てる素敵なものだと思うよ。