My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
ゴズから聞いた話によると。
ローマに着いて二日目に、神田はビットリオと闘技場で剣を交えた。
イノセンスの能力は使えないから、お互いの技量で戦うしかない。
剣術の技量は互角だったらしく、決着がつかないまま三日間戦い続けたらしい。
三日も戦い続けるとか…神田だからできることだな。
そしてそんなことができるビットリオは、やっぱりただの人間じゃない。
その戦いの最中。イノセンスに引き寄せられてか、大量のAKUMAが闘技場を襲い、その際にゴズは本部との通信機器を壊されてしまった。
その後この地下へと去ったビットリオの姿に、後を追った神田とゴズは──…なんとそのまま迷子。
故に街にも情報はなかったし、本部との連絡は取れなかった。
そしてこの深手を負ったのは、つい二日前にこの地下でビットリオと再び剣を交えた時らしい。
「僕に戦闘で手出しされたくなかったら、ちゃんと怪我の手当てくらいして下さい」
「…チッ」
アレンのその言葉が効いたのか、やっと渋々だけれど神田は団服のボタンを開けてくれた。
雑に巻かれた包帯の下から出てきたのは、ざっくりと深く斬り込まれた傷。
大きく荒いその切り傷は、あのビットリオの大剣によってできたものらしい。
…誰が見たって酷い怪我だってわかる。
いくら神田の体が高い治癒力を持っていても、無視しちゃ駄目だ。
こんな大きな傷。
「新しい包帯に取り換えるから。その団服脱いで」
「それくらい自分でできる」
「神田は手当て苦手でしょ」
私に手当てしてくれた時も、いつもどこか歪で不器用なものだった。
「私がちゃんと手当てするから。ほら脱いで」
「……」
もう一度催促すれば嫌そうな顔をしたけど、また渋々と団服を脱ぎ始めた。