My important place【D.Gray-man】
第6章 異変
「ぁ…ありがとうございます…っ」
予想外の応えに、ついぽかんと固まってしまったけど。慌ててもう一度頭を下げる。
初めて自分の意思を通して、そんな私の言葉を室長はきちんと受け止めてくれた。
今まであまり気にしていなかったけど、この人はこの黒の教団の一番上に立つ人。
それだけの器を持った人なんだ。
「でもあの神田が、自分から話しますかね」
「ふふん。それは聞いてみなくちゃわからないじゃないか」
「…室長、なんか嬉しそうっスね」
溜息混じりにリーバーさんが零した言葉は、私も予想していたこと。
だけど室長は、何故かにこにこと満面の笑みを浮かべていた。
確かになんだか嬉しそう。
なんでだろう。
「だって初めて雪くんが僕に意見してくれたんだよ。嬉しいに決まってるじゃないかー」
「はい?」
予想もしていなかった解答に、目が点になるとはこのこと。
「言ってる意味がわからないんですが…」
「そのまんまの意味だよ」
だから何が。
普通、上司に我儘な自分の意見を押し付けるなんて、良いことでもなんでもない。
そう疑問を顔に出しても、室長はにこにこ笑うばかり。
リーバーさんを見れば、呆れ混じりの顔で苦笑された。
どうやら真意は室長にしか、わからないらしい。
「ええっと、それじゃあ私はこれで…」
「あ、待って雪くん」
とりあえず報告は済んだから、司令室を去ろう。
そう思い頭を下げれば、何かを思い出したように室長に呼び止められた。
なんだろう?
「今回の現象をよく知る為にも、検査はしたいから。雪くんは暫く入院ね♪」
「……え。」
にーっこりと浮かべた室長の笑みは、先程の優しさなんて欠片もなく。有無言わさない上司命令に、入院を余儀なくされてしまった。
…医療班の婦長さん、怖いから苦手なんですよ…私。