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My important place【D.Gray-man】

第28章 ローマの剣闘士



 ギィンッ!


 再び摩擦音。
 下から薙ぎ払われようとしていたビットリオの剣は止められて、そのまま弾かれた。


「貴様…生きていたのか」

「あれくらいで死ぬ訳ねぇだろ」


 鋭い目つきで言葉をかけるビットリオに、その低い声が吐き捨てる。


「勝手に人を殺すな」


 意志の強い声。
 すぐ目の前に背中を向けて立つその人物が、ちらりと一瞬だけ私に目を向けた。
 真っ黒い、何もかも見透かすような鋭い眼孔。


「お前もだ、この馬鹿が」


 はっきりと"馬鹿"と告げるその声に迷いはない。
 それは見間違えるはずもない、紛うことなき。


「神田…! 無事だったんですね!」


 アレンの言う通り、神田の姿だった。

 いつの間に現れたのか…やっぱり神田の特性で誇る部分は、その速さだと思う。


「余所見しているのは貴様だろう!」

「!」


 不意にそこに飛ぶビットリオの声と斬撃。
 ギャンッ!と強い摩擦音を響かせながら、ビットリオの大剣と神田の六幻が競り合う。


「は…っその程度で奇襲になるかよ」


 競り合いながら、神田が鼻で笑う。
 ギリギリとお互いの力は刃を真ん中で止めたまま、動かない。
 それはそれだけ、お互いの力が互角なんだということを示していた。


「神田! 僕も助太刀します!」


 どうにか解除コードを打ち終えたアレンが、結界から出て駆け寄ってくる。


「こいつは俺の獲物だ、手を出すな」


 だけど瞬間、ギロリと殺気立った目を向けられて、忽ちその足は止まった。

 …うん。


「獲物って…餌を狩る獣ですか…」

「…やめとこう、アレン。今参戦したら絶対攻撃される」


 邪魔するなら容赦なく界蟲とか飛ばしてくるからね、あの人。


「…重々心得てます」


 前に似たような経験でもしたのか。何か思い出すように、アレンは深々と頷いた。





「神田さーん! 置いていかないで下さいよ…っ!」





 そこに響く別の声。
 振り返った私とアレンの目に映ったのは、バタバタと大柄な体を揺らして走ってくる──


「ゴズ…!」

「えっ!? 雪先輩っ!?」


 神田との任務で一緒だったゴズだった。
 よかった、ゴズも無事だったんだ…!

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