My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「解除コードは"堪忍五両思案十両"だよ」
「かん…にん?」
「かんにんごりょうしあんじゅうりょう」
「…なんですかその暗号みたいな言葉」
「暗号じゃなくことわざね。なんか最近そういう縁起の良いことわざを解除コードにするの、周りで流行ってて」
任務先での験担ぎみたいなものかな。
ついこの間までは、自分の座右の銘みたいなものを解除コードにするのが流行ってたけど、今はことわざなんです。
ファインダー内での現ブームはそれです。
「流行りって…なんですかその女子高生的感覚」
「私じゃないから。その設定組み込んだのバズだから」
面倒だからそのままにしてただけ。
いいから早く──
「!」
ゾクリと背中で悪寒。
咄嗟に飛び退けば、その場にガンッ!と巨大な剣が振り落ちた。
あ、危ない…!
「アレン、早く打って!」
「え、ええと…かんにん…っなんでしたっけ!?」
「"堪忍五両思案十両"!」
「なんでそんな難しい言葉にしたんですか!」
「私に言わないで下さい!」
だからバズだからそれ!
あの人何気に、ことわざとか名言集とか好きだから!
「女に手を出す趣味はないが、悪魔となれば別だ。姫に害を及ぼす前に消え去ってもらおう!」
「だから悪魔違うから! 私人間です!」
巨大な剣を振るわれ、慌てて再びビットリオから距離を取る。
でも私の歩幅と大柄なビットリオの歩幅じゃ差が大きくて、あっという間に間合いを詰められた。
まずい…!
「死ね!」
下から薙ぎ払うかのように、巨大な刃が競り上がる。
一気に体を下から貫かれる。
そう直感した時。
ギィンッ!
鋭い刃の摩擦音と共に、突如目の前が真っ暗になった。
「テメェの相手は俺だ」
違う。
「余所に目移りしてんじゃねぇよ、このタコが」
真っ暗になったように思えたのは、目の前に立つその真っ黒なコートが視界いっぱいに広がったからだ。