My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「さっさとこの場を去れ小僧! でなければあの悪魔と同様、貴様の命も貰うぞ!」
悪魔って…何それ私見て言ってませんか!?
というかそれ、私の命は貰うってこと!?
悪魔違うから!
確かに最近ちょっと人間離れしちゃったかもしれないけど、違うから!
人間やめてませんから!
「わ、わかったわかった! わかりました! 一度退散しますから、その剣こっちに向けないで!」
咄嗟に取り繕うように叫んで、両手を挙げて降参のポーズをしてみせる。
こんな狭く不慣れな場所で、ただでさえ剣術の腕も立つビットリオ相手じゃ、アレンは勝てない。
「貴様は外には出せん。その皮を脱いで正体を見せろ!」
「皮って! そんなことしたら私死にますけど!!」
人の皮を脱ぎ着できるのはAKUMAだけだから!
「雪さんに手出しはさせません! どうしても出したいと言うのなら、僕を倒せ!」
はっきりと言い切るアレンの言葉に、胸がじんとする。
本当、良い子だなぁ。
というか紳士だなぁ。
神田にもその爪の垢を煎じて飲ませてあげたいくらい。
……。
…いや、うん。
神田がアレン並みに紳士だったら、なんか気持ち悪いからやめておこう。
「大口を叩くなら、腕を磨いてからにしろ!」
「ッ!」
ガガ!と横から振られた大剣を、アレンが退魔の剣で防ぐ。
それでも力で押し切られ、アレンの体は壁際に吹き飛ばされた。
いくらビットリオが大柄で筋力があっても、あんな力普通の人間なら出せない。
…神田みたいな特異な体ならまだしも。
ということは…やっぱりイノセンスが関係してるのか。
──カチッ
「いたた…え?」
壁から身を離しながら、不意にアレンのその動きが止まる。
ギギギ…とその背後で鳴る鈍い音。
…まさか。
「げっ」
見えたのは、壁にぶつかった時にでも作動したのか。アレンの背後でずらりと並んだ刃を見せるカラクリの壁だった。