My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「はぁ…っ」
大きく深呼吸をする。
落ち着け私。
落ち着け。
大丈夫、私はまだ──
大丈夫。
「はー…っ」
元々、一瞬掠めただけだったからか。やがてドクドクと脈打つ胸の痛みが、段々と静まっていく。
その気配にほっと自分の胸を撫で下ろした。
…よかった。
──ザ、
「…?」
足音は目の前でした。
見上げる。
「…嫌な気配がする」
見えたのは、鋭い眼差しと大きく振り被られた剣。
「貴様、あの悪魔共と同じか」
え?
「雪さん!!」
アレンの私を呼ぶ声と同時に、ぶおんっとその巨大な剣は私目掛けて振り下ろされた。
バチチッ!!
私の周りを囲うように張ってあった結界に、衝突した刃が激しい摩擦を起こす。
「なんだその奇天烈な壁は…!」
私に剣を振り下ろしていたビットリオの目つきが険しくなる。
え、ちょっと。
なんで私狙われてるの!?
「貴方の相手は僕です! 彼女に手を出すな!」
「貴様では俺には勝てん。技量は見えた」
退魔の剣を振るうアレンに、その攻撃を大きな刃で器用にいなして相殺するビットリオ。
確かにビットリオの言う通りだった。
アレンにエクソシストとしての実力はあっても、剣士としての技量はきっとビットリオの方が上。
ビットリオ本人か、はたまたその巨大な大剣か。どこに宿っているかわからないけど、イノセンスの可能性がある以上、壊さない為にアレンのイノセンス本来の力は使えない。
故にイノセンスを傷付けない退魔の剣を向けることはできても、左腕は使えない。
お互いの技量でしか戦えないとなると、剣闘士相手にアレンが剣で勝つのは難しい。