My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「目、瞑ってていいですよ」
「まさか。ちゃんと見てるよ」
私に特別な力はないけど、ただ守られるだけの存在にはなりたくない。
何かあった時に臨機応変に動けるように、しっかりと目は開いていたい。
間近にあるアレンの顔に笑顔で言えば、その顔はふと笑ってくれた。
「それじゃ、いきますよ」
「うん」
左腕に力を込めるように、ぐぐっと下に構える。
その銀灰色の目は真っ直ぐに暗い天井に向いて。
攻撃を放つ。
「待て」
止めたのは知らない声だった。
「え?」
「っ!」
ぶおんっと空気を切るような音。
あのカラクリの斧よりもずっと重い、そんな音が聞こえたかと思った。
刹那。
ガツッ!
「ぐ…ッ!?」
「っ!?」
強くアレンに抱き込まれるのと、目の前に知らない顔が現れたのは同時だった。
背中から抱き込んだアレンの鈍い声が耳に届く。
それと同時に、目の前の知らない顔が放った衝撃をイノセンスの左腕で受ける。
だけどその威力は大きく、体はアレンと一緒に後ろに吹き飛ばされた。
一瞬のことだった。
本当に一瞬で、一体何が起きたのか状況理解に時間を有するくらい。
ダンッ!
背中に衝撃。
でも私は痛くない。
「アレン…!」
背中から抱き込んでくれたアレンが、衝撃から庇ってくれたから。
「っ…大丈夫、です」
吹き飛ばされて強く壁に背中から衝突したアレン。
でもその体に纏っているマントのお陰か、壁にヒビは入っているものの深手ではないようだった。
よかった…!