My important place【D.Gray-man】
第6章 異変
「室長、それは…」
「公にはしていないけど、口外禁止な訳じゃないし。こうして関わったんだ、雪くんにも知っておいて欲しい」
歯切り悪く声をかけるリーバーさんには笑顔を向けて、真剣な表情に切り替えた室長がこちらを向く。
…待って。
「彼の──」
「待って下さいっ!」
咄嗟だった。
室長の言葉を遮るように、気付けば勝手に口は声を張り上げていた。
「す、みません…あの…」
勢いは最初だけ。
自分でもわかるくらいに、すぐに声は小さく狼狽えてしまった。
「それは…神田から、聞きたい…です」
それでも、自分の思いだけははっきりと口にしていた。
「任務で支障が出るなら、聞きます。でも…神田の体のことだから…できるなら、神田の口から…聞きたいんです」
我儘だと思う。
ファインダーという自分の立場を考えるなら、ここで聞いておくべきだとも思う。
それでも。
『興味本位で近付くな。迷惑だ』
あんなにはっきりと神田が拒絶してきたことを、神田以外の人から教えてもらうのは、なんだか卑怯な気がした。
もし私の我儘が通るなら、神田本人から教えてもらいたい。
…教えてもらえるかどうかも、わからないけど。
「すみません…」
室長への失礼を感じながら、深く頭を下げる。
「…雪…」
呟くようなリーバーさんの声に恐る恐る顔を上げれば、そこには驚いたように見てくる顔があった。
同じく、コムイ室長も眼鏡の奥の目を丸くしている。
今までこんなふうに反発したことなんてなかったから、だろう。
怒られる、かな。
「…そっか」
そんな私の不安を余所に、不意にふわりと室長の顔は和らいだ。
「大丈夫、任務に支障はないよ。君が望むなら、神田くんから教えてもらうといい」
とんとんと報告書を机の上で整理して笑う。
それはいつものフランクな笑顔や、綺麗に浮かべる時の室長の笑顔ではなく。
「それでもわからないことがあったら、いつでも聞きにおいで」
とても優しい、微笑みだった。