My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
──カツン、
暗く冷たい瓦礫の上に響く、静かな足音。
「闘技場の下にこんな地下なんてあるんですね」
「仕掛け扉とか、割とカラクリ的な要素はあった建物だから」
階段を下りていくと、其処は暗く狭い地下通路が続いていた。
あちこち巡らされている通路は、一瞬迷路のようにも見える。
「アレン、迷子にならないでね。私見つけ出す自信ない」
「が…頑張ります」
本当に見つけ出す自信がないから切実な思いを込めて言えば、握り拳を作った少年は自信なさ気に頷いてみせた。
…不安。
本当に迷子になったら、色んな意味で困る。
AKUMAが出現したら大変だし、そもそもこんな暗い迷路みたいな通路で一人になりたくない。
…若干怖いし。
「…ロープあるから、お互いの体でも結んで繋いでおく?」
「えっそんなに信用ならないですか僕っ」
「というかすごぶる不安」
割と本気で提案すれば、ガンッとショックを受けたらしいアレンが力なく苦笑した。
「まぁ…方向音痴なのは認めますけど……じゃあ、はい」
「?」
ポリポリと頬を掻いて、差し出してきたのは右手。
「ロープで繋がれるのは流石に…ってことで、手でも繋いでいませんか?」
「…手?」
「はい」
にっこりと笑って頷くアレンに、疾しさなんて微塵も見えない。
こういうところ、本当に紳士的だなぁって思う。
「じゃあ…離さないでね」
「勿論」
同じく手を差し出せば優しく握られた。
そのままエスコートするかのように、一歩先をアレンが歩幅を合わせて歩き始める。
うん、とっても紳士的。