My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
✣
「やっぱりやめましょう」
「大丈夫だって」
「でも…」
これ、何度目のやりとりだろう。
再び見えてきた闘技場の遺跡を目にして、アレンが渋るように首を横に振る。
明日にはあの闘技場に沢山の賞金稼ぎの人達が向かう。
下手すれば、AKUMAの攻撃で命を落としてしまうかもしれない。
そうなる前に、どうにかしないと。
そう思い立ってその日のうちに、再び闘技場へと私達は足を運んでいた。
夕日はもう落ちかけていて、辺りは薄暗い。
「こんな所で野宿なんて危険過ぎます」
「流石に闘技場の中で寝ようなんて言わないよ。それに寝るのは、クラウディアさんを見つけてからね」
なんでビットリオがクラウディアさんを攫ったのか。
あの屋敷で配られていたクラウディアさんの写真ポスターを見ながら、アレンに言葉を返す。
ポスターに映っているのは、金髪の綺麗な顔立ちの少女だった。
16歳には到底見えないくらい、大人びた顔立ちをしてる。
…ラビだったら絶対"ストライク!"って言ってただろうな。
野宿って言ったけど、単に街まで戻る手間を惜しむ為であって。
クラウディアさんを見つけられたら、戻って宿でも取ろう。
その時間帯が遅くなれば最悪、野宿になるかもしれないってだけだよ。
「それよりアレン、AKUMAは探知できる?」
「…はい」
顔を上げて見れば、渋々左目を発動させるアレンがいた。
「…今はいないみたいです」
「よし。じゃあ今のうちに捜そう」
鬼の居ぬ間になんとやら、だよアレン。
さくさくと近付いた闘技場の中に踏み込めば、観念したのかアレンも文句を言わずついて来てくれた。