My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「婿殿、やはり儂は納得できんっ。クラウディアは家出したんですぞ。もしくはビットリオの名を語った、馬鹿な男に唆されたんだ。わざわざ金を出して賞金稼ぎなど集めなくても警察に…!」
「ご心配めさるな。私も無駄な金など使う気はありません。宝くじに当たった幸運な者が、それに嫉妬した別の者に襲われるといった事件はよくあることでしょう」
薄い笑みを貼り付けたまま室内に踏み込んだパレッティさんが口にした言葉は、曖昧な表現をしているものの、僕にもわかる汚いやり口だった。
つまり最初から賞金なんて渡す気はないらしい。
…というかそんなこと、僕達みたいな他人の前で口にしちゃっていいのかな。
「お父上も成り上がり者の一人。その辺のことはご経験済みなのでは?」
「……」
「ところで…先程からこちらを睨んでいるその者共は?」
「あ、ああ…なんでも黒の教団だとか」
「お父上が呼ばれたのか」
「あ、いや」
つい眉を潜めてしまっていた僕を見て、パレッティさんが鼻にもかけない様子で聞いてくる。
成程、そうやって他人を下に見る姿勢でいるから自分の汚い行いも遠慮なく口に出せるってことか。
…雪さんの言う通り。
この屋敷の人間は、色々と問題がある人ばかりらしい。
「ほう。あの有名な黒の教団の方々にご協力頂けるなら、賞金稼ぎなど必要ないな。是非──」
「お断りします」
にっこりと笑うパレッティさんの言葉を遮って、席を立つ。
「クラウディアさんに戻ってほしかったら、自分で捜したらいいじゃないですか。お金だの身分だの財産だの、貴方達はそんなものと娘さん、どっちが大切なんですか?」
「アレン…」
見上げてくる雪さんの視線も構わず、吐き出すままに口にする。
クラウディアさんに会ったことなんてないからわからないけれど。
こんな人達が周りにいれば、家出したくもなるんじゃないかな。