My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「既に知ってのことと思うが、サルディーニ家のクラウディア嬢がビットリオと名乗る賊に攫われた。此処におられるサルディーニ氏も心を痛めておられる」
成程。
あの隣に立つ男性はクラウディアさんの父親なんだ。
「私は名誉あるパレッティ家の跡取りとして、その家名にかけて諸君らに約束する。我が愛する婚約者、クラウディア・サルディーニをあのにっくき賊から──」
「あのパレッティって人、クラウディアさんの婚約者なんだね」
「クラウディアさんって確か16歳でしたよね…あんな年の重ねた方と結婚するんだ」
「…まぁ上流階級の者ならそういう結婚もあるんじゃない?」
「そういう?」
「…策略結婚とか」
思わず雪さんに目を向ければ、はっきりとは断定できないからか苦笑混じりに返された。
歳の離れた者同士の恋愛を否定する気はないけれど、確かにあの中年男性と16歳の少女は容易には結び付かない気がする。
「──そして! 娘を取り返した者にはサルディーニ家の財産の10分の1を分け与えることを約束しよう!」
高々と宣言するパレッティさんに、一斉に周りの賞金稼ぎの人達が歓喜でざわめく。
「ど、どういうことですか婿殿…! 儂になんの相談もなく突然そのようなこと…!」
ただ一人、隣で驚き声を上げるサルディーニ当主だけ別にして。
「これは心外。当然全財産を投げ出してでも娘を救い出せと命ずべきお父上が、たかが財産の10分の1程度で文句をお言いになられるのか」
「く…ッ」
冷ややかに述べるパレッティさんに、サルディーニ当主の顔が歪む。
「……なんかこのお屋敷、色々問題抱えてそう…」
「…ですね」
そんな二人の姿に、思わず雪さんと溜息をついた。
人の醜い部分が見えそうな気がして嫌な気はしたけど、ビットリオにイノセンスの可能性がある以上、無視する訳にはいかない。
「とりあえず話、聞きに行こうか…」
「…はい」
溜息混じりに背中の荷物を背負い直しながら、屋敷の入口に向かう雪さんに続く。
ついでに神田の情報も手に入るといいんだけど…賞金稼ぎの人達からは、何も情報は得られなかったし。